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斬新なビジネスモデルを武器に、初年度から黒字にまずはビジネス構想を具体化するため、H氏は東京・城南エリアに住みたいと要望する顧客-ニーズ情報の収集作業を開始する。
もちろん、現在のような携帯電話による「ニード・ネット」はないから、仲介会社を一社ずつ回り、彼らが担当している顧客のニーズを一つひとつ集めていった。
長年、住宅・不動産業界でH氏らが培ってきた人間関係もあり、数日間で二〇〇件程度の顧客ニーズ情報を収集することができた。
そして、その顧客-ニーズをさまざまなパターンで組み合わせ、購入した土地を、手書きで区画割りをしていく。
CADによる平面図はあるものの、当時はまだ「土地区割りシステム」などなかったため、すべて手作業で対応した。
「土地が売りに出たとき、顧客ニーズ情報と照合して購入すべきと判断した場合、手付金を払ってその土地の仕入契約をし、金融機関に融資を申し込みます。
一年目は資金的に余裕がなかったので、手付金を払った後、融資の承認が下りるかどうか、胃がキリキリと痛みました。
まるで綱渡りのような、ギリギリの攻防を金融機関としていました」同社の新しい発想に対し、ほとんどの金融機関は理解を示してくれた。
しかし、時には融資が決まらない場合もあった。
何しろ、これまでになかった、まったく新しい仕組みに対して融資をするには、金融機関も「清水の舞台から飛び降りる」ほどの決断が必要だったようだ。
だが、全般的には、斬新な発想を持つNに対して協力的であったことは確かなようだ。
どうしても、融資が決まらなかったとき、ある程度の利益が出ることがわかっていれば、ほかの会社に所有権を移し、物件を流通させる方法はある。
しかし、これでは本来、H氏がめざしてきた事業のあり方とはかけ離れてしまう。
やはり、顧客ニーズに応じた土地の仕入れ、最適な区割り、そして設計・施工などを総合的に供給しなければいけない。
そうでなければ、単なるブローカーになってしまうからだ。
企業側の都合で考える「プロダクト・アウト」 の発想ではなく、あくまでも顧客本位の立場に立った「 マーケット・イン」 のデベロッパーをめざすところに、Nの存在意義があるとH氏は考えていた。
だから、土地を右から左へ流すような部分的な取引ではなく、顧客を中心とした、住まいに関する総合的なサービスを提供するデベロッパーでなくてはならない。
すでに述べたとおり、Nのビジネスモデルは、顧客の要望をもっとも重視しつつ、土地の売り主にも大きなメリットがあり、しかも販売仲介会社や仕入仲介会社、施工会社にも利益をもたらすものである。
つまり、一人が利益を得るために、ほかの誰かが損をするような事業であってはならなかった。
こうしたH氏の思いに共感するとともに、ビジネスに大いなる可能性を感じ、設立に際して出資してくれた出資者たちゃ金融機関などからは、「一期目は赤字でもいい」という声もあった。
それは、すぐれた発想ではあるが、このシステムはすぐに売上高には反映しないだろうという思いから、初期段階で無理をして、事業の将来をつぶしてはならないという考えが出資者たちの聞から出ていたのである。
しかしH氏は、なんとしても一年目からの黒字をめざした。
結果として、第一期は売上高は七億五七〇〇万円、経常利益は約四〇〇万円の黒字を計上した。
そして、翌平成十四年九月、四人だった社員は倍増。
ビジネスモデルについて特許出願するなど、新たなビジネスは名実ともに構築されていくのである。
Nは、不動産業界に新たなビジネスホテルを提案したことに見られるように、起業家・H氏の既存の常識にとらわれない柔軟な発想のもと、事業を着実に拡大しつつある。
H氏の企業家精神は、同社の三つの企業理念に集約されている。
まず、Nの三つの企業理念を紹介しよう。
※「業界革新を目指します」これまでの業界の固定観念を打破し、企業側から一方的に提供するプロダクト・アウトではなく、顧客からの要望を重視したマーケット・インに目線を変えることにより、最適な「暮らし」を提案する。
自社の事業を「真のサービス業」ととらえ、最適な「住空間」と「暮らし」を提案する。
事業にかかわるすべての方が満足してこそはじめて事業が成り立つと考えている。
住空聞を購入していただいた顧客の満足、土地を譲っていただいた売り主の喜び、携わっていただいた関係者の笑顔を同時に追求していくこと、それがNが目指す「トライアングル・ハッピー」である。
※「世の中に必要とされる企業として」追い求める企業のあり方とは、「世の中の人々に感謝し、感謝される住生活総合のサービス業」である。
そのために、既存の常識にとらわれず、知恵と力を結集して新しいことに挑戦しつづける。
常に世の中にとって「NEED(必要)」となるように、昨日よりも今日、今日よりも明日と進化しつづける。
H氏が提唱する「トライアングル・ハッピー」とは、顧客はもちろん、Nの事業に関連する企業をはじめとした関係者すべてが満足し、同社と契約、取引してよかったと感じてもらえるようにしたいということである。
つまり、要望していたエリアや住空間を購入して生活している顧客の満足、その土地を提供した売主の満足、Nの事業に関係した会社(販売仲介会社、仕入仲介会社、施工工務店、金融機関など)の満足を同時に追求していくこと、それが同社の理念である「トライアングル・ハッピー」なのだ。
これまで何度もふれてきた「トライアングル・ハッピー」だが、それを実現するためには、具体的Nうすればいいのか。
まず、顧客の視点で考えてみよう。
顧客はまず土地を探すことが第一歩である。
通常、売地情報というのは、すでに区画割りがきちんとなされ、価格と広さが決められている。
それらのなかから希望する広さや価格の相違など、情報を絞り込んでいく。
だが、人気エリアならなおさら理想の物件とめぐり合える確率は低い。
こうした一方的なプロダクト・アウト型の不動産情報だけに頼っていたために、そのエリアでの土地の購入そのものをあきらめてしまう人も多いはずだ。
実際に自身の要望と現実とのギャップに落胆する顧客は多い。
そうしたミスマッチを回避するのが、Nのサービスである。
複数の顧客が要望するエリア内の土地を、それぞれの予算に合わせて区割りすることが可能なシステムだ。
狭くても安いほうがいいという顧客もいれば、多少は高くても広さが欲しいという顧客もいる。
顧客によって満足する要素に違いがあるのは当たり前であり、それならばそれぞれの顧客ニーズに応じて土地を区割りすればいい。
複数の顧客のニーズを組み合わせ、それぞれにとって最適な土地を創り上げる仕組みを築けば、顧客満足度を高め、顧客のハッピーを得ることができるはずだ。
H氏は、次のように述べている。
「いままで、希望する物件になかなか出合えなかった一因には、お客さまの-ニーズが販売会社や営業担当者のもとで埋もれてしまい、せっかくの売地情報をうまくお客さまに提供できていなかった面もあるのではないでしょうか。
それならばニーズを蓄積しておけば、お客さまには喜んでもらえるし、成約率も高くなる。
土地が売りやすくなるわけですから仲介会社も喜びます。
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